先日、アジャイルジャパン・サテライト長野のイベントで弊社のアジャイル開発事例を発表させて頂いてから、改めてアジャイル開発を深堀りしてみようと、様々な専門書、関連図書を乱読している今日このごろです。
世の中の流れ的に、時代は完全にアジャイルの方へ舵が切られつつありますが、実際のところ「具体的に何をどうやって始めていいかわからない」という開発チームもたくさんあるようですね。
そんなアジャイル開発への最初の一歩がなかなか踏み出せない技術者さんや開発チームのために、「アジャイル開発・最初の1步」的な講座を現在開発中です。
アジャイル開発の中でも特に日本と関係の深い「スクラム」を中心に、具体的なチーム運営やプロジェクトのすすめ方はもちろんの事、スクラムの様々なアクティビティの裏側にある哲学やそのアクティビティが生まれた背景等、実用書を読むだけではなかなかキャッチアップすることができない本質的な事柄までをご理解いただけるような講座にしたいと思っています。
ぜひお楽しみに!
アジャイル開発とセールスレターの意外な共通点?
さて、前置きはこれぐらいにして…
本日お伝えしたいことは、アジャイル開発におけるユーザストーリーとセールスレターには意外な共通点があるのでは?…ということです。
この共通点に気がつくと、普段あまり「集客」や「セールス」といった業務に携わることのないIT技術者でも、普段の業務を通じて集客力の源泉であるセールスレターを書く力を鍛えることができそうです。
スクラムやXP等のアジャイル開発において、非常に重要なライティング技術の中に「ユーザストーリー」があります。ユーザストーリーとは、これから開発するソフトウェアに期待されるビジネス価値を表現する形式です。
このユーザストーリーは、システムを開発する技術者と、それを委託するビジネス側の両方が理解しやすい表現で記述することが極めて重要になります。何故なら、このユーザストーリーは、システム開発を委託する側とそれを受託する技術者側との「共通言語」になるからです。この共通言語が、どれだけ精度高く記述され、そして共有されているかが、これから生み出されるソフトウェアの満足度にそのまま跳ね返ってくることは想像に難しくありません。
ユーザーストーリーの書き方
このユーザストーリーですが、一般的にはポストイットや情報カードに、次のようなフォーマットで記述します。
私は<<役割>>として、<<機能・性能>>を実現したい。
それは<<ビジネス価値>>のためだ。
例えば、「私は一般的なWordpressユーザとして、簡単な操作でSEO対策のキーワードを設定したい。何故ならば特別な技術を持たなくても基本的なSEO対策を実現したいからだ。」
っとこんな感じで記述します。
ここで極めて重要なのは、単なる「機能・性能」を記述するだけではなく、その先にある「ビジネス価値」までも記述するという部分です。
このビジネス価値の部分がうまく書けないユーザーストーリーというのは、ある機能を実装して確かに「便利」にはなるかもしれませんが、そこから生み出されるビジネス価値は極めて小さい、もしくは無いという事になります。
我々IT技術者は、機能・性能については様々な思いや経験もあってスラスラ書けるのですが、こと「ビジネス価値」の記述となると、スラスラ書くことはかなり難しいですよね。
そして一方、セールスレターを書く上でも非常に重要な事があります。
それは「メリット」だけではなく「ベネフィット」を記述するということです。
素早く確実に、読み手の共感を得る文章を、だれでも簡単に書くことができる文章術、「エンパシーライティング・メソッド」を開発されたことで有名な中野巧さんのご著書「売れる文章術」には、メリットとベネフィットの違いについて、次ように書かれています。
<<引用開始>>
・メリット:商品のウリ・特徴・機能
・ベネフィット:メリットによりもたらされる良いこと
<<引用終了>>
この説明を受けて、エンパシーライティングのメリットとベネフィットを次のように比較されています。
- メリット
・共感が生まれる文章術
・1枚のチャートで素早く文章が書けるようになる
・社員への文章始動が簡単になるフレームワーク
- ベネフィット
・共感される文章で新しいファンやリピーターが増える。
・文章が早く書けるようになり、文章作成に奪われていた時間を新規顧客のフォローに使えるようになって顧客満足度がアップする。
・社員が使いはじめることで売上が勝手に上がるようになる。
ユーザーストーリーとセールスレターの共通点
さて、ここでユーザーストーリーとセールスレターの共通点に気が付きませんか?
セールスレターの「メリット」の部分は、ユーザストーリーの「機能・性能」へ読み替えることができそうです。そしてセールスレターの「ベネフィット」は、ユーザストーリーの「ビジネス価値」に読み替えることができそうです。
ユーザーストーリーの共通点と、セールスレターの共通点は、共に読み手の、もしくはシステム利用者のベネフィット・ビジネス価値を明確に表現する必要があるということです。
これが十分でないと、それは「売れないセールスレター」となってしまい、「使えないシステム」になってしまうということです。
我々IT技術者が機能設計を行う時、ついつい様々な便利機能をモリモリに盛り込んで「このシステムはすごいんだぞ!」「このシステムは便利だんだぞ!」っとアピールしたくなります。
しかし、その機能設計を行う時、お客様の「ビジネス価値」、つまり「ベネフィット」はあまり意識されていません。
お客様のビジネス価値、ベネフィットを生み出すことのできないシステムは、いくら完成したソフトウェアが「高機能」なものであったとしても、お客様の満足えることはできません。
逆に、機能としてはそれほど優れていなかったとしても、そのソフトウェアから生み出されるビジネス価値、ベネフィットが大きければそれは顧客満足度の高いシステムということになります。
まとめ
今回は、たまたま同時に2冊の本を読んでいて気がついたのですが、これはこの双方に重要な共通点を意識してユーザーストーリーを書くことで、知らず知らずのうちに、普段あまり「集客」や「セールス」といった業務に携わることのないIT技術者でも、優れたセールスレターを書く力を鍛えることができそうですよね。
お互いに共通している重要な点は、如何にお客様が求めるベネフィット、そしてビジネス価値にアタマとココロを寄せることができるかということだと思います。
最後に…
本文中にご紹介したエンパシーライティングのオフィシャルサイトはこちらです。
http://www.empathywriting.com/ewm/