こんにちは。
株式会社ライジングサン・システムコンサルティングの岩佐です。
この記事では、社内に新しくFileMakerプラットフォームを導入するにあたって、どれぐらいの費用が必要なのか…といった情報をお伝えします。
目次
1.FileMakerプラットフォームのライセンス体系
FileMakerプラットフォームのライセンスには大きく「買い取り型(永続型)」と「サブスクリプション型(年間更新型)」の2つのライセンス体系があります。
前者の買い取り型は、購入したバージョンのみを永続的に利用可能なライセンス。そして後者のサブスクリプション型は、1年毎にライセンス費用を更新するタイプで、常に最新バージョンを使うことが可能となります。
そして後者の「サブスクリプション型」は、さらに「AVLA(Annual Volume License Agreement)」と、「FLT(FileMaker For Teams)」という2つのタイプが存在します。
更にはSLA/ASLAというライセンス形態もあります。
FileMakerプラットフォームのライセンス体系はこの数年で非常に複雑になりました。また、ライセンスの買い方によって「オトクな買い方」と「損する買い方」が確実に存在します。
この先は、1サーバ+5CALのミニマムスタートを前提にお伝えしますが、最初からこれとは異なる形での導入をご検討の企業は、一度FileMakerの購入相談窓口、もしくはFileMaker Business Alliance のリセラー資格を保有するFBAにご相談されることをお勧めいたします。
2.新規導入は年間更新のFLTを選択しましょう
しかし、「これから新たにFileMakerプラットフォームを導入しよう」と考えている企業の場合は、まず年間更新型の「FLT」を検討しておけばOKです。
そして、個人的に「永続型(VLA)」のライセンス購入は推奨していません。なぜなら、FileMakerプラットフォームの大きなアドバンテージである「小さく始めて大きく育てる」アプローチが取りづらくなるからです。
永続型のライセンスを購入したい企業の基本的な考え方としては、「一度つくったらできるだけそれを触らず、10年は使い続ける」といった旧来の価値観に基づいたものと思われます。
もしこのような価値観であれば、FileMakerプラットフォームではく、もっと別の開発プラットフォームをチョイスすることをご推奨します。
一方、ビジネスの変化に合わせて柔軟に事業をアジャストし、それに合わせてシステムも追加・修正を繰り返すといった価値観にもとづいてシステム導入をしたい場合、FileMakerプラットフォームを推奨します。
そして、ビジネス環境の変化に合わせてシステムも常にアップデートするのであれば、常に最新バージョンを使い続けられる年間更新型のライセンス体系がニーズにマッチします。なぜなら、FileMakerプラットフォームは、バージョンを重ねる度に「開発生産性」が向上するからです。
私は様々なソフトウェア開発プラットフォームで開発をしてきましたが、FileMakerプラットフォームほど「正調進化」をし続けるプラットフォームは他にありません。バージョンを重ねるごとに「そうそう、この機能がほしかったんだ!」というニーズを確実に汲み取ってくれます。そして、下位互換もしっかりとサポートしてくれます。
こういった背景から、始めてFileMakerを導入される企業がチョイスするライセンス体系はサブスクリプション型のFLT(FileMaker For Teams)を推奨します。
3.ミニマムスタートの金額
FLTでのミニマムスタートは、1サーバ+5CAL(Client Access License)の構成になります。つまり、1つのFileMakerServerに最大5クライアントが同時接続可能な構成です。カタログ価格だと、この構成が年間96,000円となります。
さらに、FileMakerServerを動かすサーバ環境が必要になります。もちろんですが、この構成のFileMakerServerを動かす環境には様々な選択肢があり、一概に「これがベスト!」という選択はありません。
今回、このブログ記事を書くにあたって色々と考えたのですが、「ミニマムスタート」に限定するのであれば、「クラウド」と「オンプレミス」で以下2つを推奨します。
3-1.オンプレミス:Mac mini
もしオンプレミス前提でのミニマムスタートであれば、FileMakerServerを【Mac mini】にインストールして利用する環境をおすすめします。
これは少し悩みました。というのも、多くの企業でMacOSはまだまだ「異端」な存在であり、ましてやサーバOSとして本当に使えるのかどうか、「?」が付くと予想するからです。
しかしそこは心配ございません。MacOSはもともとBSD/UNIXベースのOSなので、サーバOSとしては必要十分の機能を兼ね備えています。また、費用的にもOS込み10万円以下で、必要十分なスペックの環境が入手可能です。
こちらは、「CPU:Core i 5 2.6GHz」「メモリ:8GB」「ストレージ:SSD 256GB」の構成で見積もったものですが、価格は90,800円とかなり安価です。キーボード・マウス・モニターはついていませんが、こちらは社内に余っているもので十分です。
これぐらいのスペックであれば、20〜30人が常時アクセスするようなシステムでも、十分に対応することが可能でしょう。
但し、Mac mini はあくまでもデスクトップマシンであり、サーバマシンではありません。Mac miniによるFileMakerServerの運用はあくまでもミニマムスタートを前提とした場合に限ります。
オンプレミスでの運用でも、何れかのタイミングでしっかりとしたサーバマシンを購入されることを推奨します。
3-2.クラウドの場合はNTT Cloud.n
クラウド環境を前提としたミニマムスタートは、NTTコミュニケーションズのパブリッククラウドサービスである「Cloud.n(クラウド・エヌ)」を推奨します。
数あるクラウドサービスからこの「Cloud.n」を推奨する理由は、通信量に対する従量課金が無いからです。
AWSを始めとして、多くのパブリッククラウドサービスは通信の従量課金が設けられており、この試算が非常に面倒です。また、社内稟議を起案する場合、月額通信量によって支払金額が変動することは多くの場合「正確な金額がわからないから」という理由で決裁をえるのが難しくなります。
その点、従量課金の無い「Cloud.n」であれば毎月の請求額は一定です。
こちらは、4CPU/メモリ8GB/ストレージ80GBで見積もった結果ですが、月額税込みで約17,000円です。この金額が月額のMax料金となります。
また、「Cloud.n」は時間課金となるので、例えば土日祝祭日や業務終了後にサーバをシャットダウンする運用を採用すれば、さらにこの金額を下げることができます。
4.開発のアウトソーシング費用
自社で完全内製をされる場合を除き、何らかの形でシステム開発のアウトソーシングが必要となるので、その費用も見積もっておく必要があります。
正直こちらはケース・バイ・ケースで、見積りようのない部分なので、こちらでは弊社がご提供している月額定額型の開発サービスを例に計算します。
弊社は、基本的に「内製化支援」を主たるサービスとしておりますが、いきなり最初から内製化を前提としているわけではありません。
まずは、概ね3ヶ月以内で確実に完成し、そして運用が開始でき、さらに導入効果もそれなりに見込めそうな課題に絞り込んで、一般的な「受託開発」の形でソフトウェアを開発します。
その後、その運用を開始したソフトウェアを「トレーニングの題材」として、内部構造を分解しながらFileMakerプラットフォームにおける開発を学んでいただきます。
このように、自社のために開発されたソフトウェアの中身を解析しながら技術を習得し、社内開発者様の技術レベルが「FileMaker認定デベロッパ」のレベルまで達したら、弊社も開発し、そしてお客様も開発するという「ハイブリッド・ソーシング」の形に入っていきます。
そしてここは少し弊社のサービスの宣伝のようになってしまいますが、最初の1ヶ月は「無料お試し期間」にしております。イメージ的にはこのような形になります。この最初の1ヶ月で、弊社の実力、そして御社との「相性」をお試し頂き、「このまま引き続きよろしく!」となれば、始めて初月の御請求書を発行します。
一方残念ながらこの評価期間中に契約の続行を望まれないと希望された場合は、初月の御請求書を発行することはありません。(この場合、開発途中のソフトウェアは全て消去させていただき、評価用サーバもクローズとなります。)
月額課金の費用については、このブログでオープンにすることはできませんが、概ね「シニアプログラマ1人月の相場と同等金額」と表現させていただきます。現在の相場観だと月額80万円〜100万円あたりになるでしょう。
弊社では、この月額課金をベースに、3ヶ月毎の契約を1単位としてサービスをご提供します。さらに、ご契約の期間中はただただ開発のみを行うわけではなく、サーバの構築もしますし、NWの構築もしますし、業務分析もしますし、必要があればドキュメントも作成します。
つまり「月額定額で、ソフトウェア開発に必要なあらゆる仕事を全て承ります。」という内容です。
ですので、一般的な受託開発に見られる「個別システム毎のお見積り」はお承りしておりません。
5.結局いくら必要?
FLTによるミニマムスタート、そして弊社のサービスをご利用いただける一般的なアウトソーシングシナリオを前提とした場合、1年間の概算費用は次のような金額になります。
FileMakerServerの運用環境を【Mac mini】 によるオンプレミスで想定した場合が約470万円、クラウド・エヌによる運用環境を前提とした場合、約482万円という結果になりました。
※1:システム最適化+開発者育成
こちらは、通常の受託開発で運用をスタートしたソフトウェアのさらなる最適化をしながら、同時に社内開発者の育成を弊社で承った場合のモデル金額です。
※2:オンラインコンサルティング
こちらは、SkypeやZoom等のオンラインビデオチャットを用いて、週に1〜2時間程度、オンライン越しにペアプラグラミングを中心としたよろず相談事をお承りするサービスです。
もちろん、この金額は状況によって変動します。例えば受託開発費の月額80万円は、あくまでも現在のシニアプログラマの相場価格から算出したものなので、このあたりは開発するソフトウェアの難易度やマーケットの状況によって変動する部分です。
また、FileMakerプラットフォームでの内製化を進める上で必須となるFileMakerPro Advancedの価格や、開発業務を強力にサポートしてくれるClip Manager / FMPerceptionといったサードパーティの開発支援ツールの費用も含まれていません。
これらを考慮すると、ざっくり約500万円というのがFileMakerプラットフォームを用いたシステム開発のアウトソーシング+内製化のスタートに必要な費用の目安になると思います。
また、弊社でサポートさせていただくお客様は、概ね最初の半年ぐらいでFileMakerプラットフォームによる開発・運用が起動に乗るので、ここで必要な数だけライセンスを買い増したり、サーバを増強するのにもう少し費用が必要となるケースが多いことを付け加えておきます。
6.まとめ
このブログ記事では、FileMakerプラットフォームを社内に導入するに当たっての費用感についてお伝えしてきました。
今回お伝えしてきた内容はあくまでも仮設を前提とした費用です。実際にはもっと安くで開発をしてくれるFBAさんもいらっしゃるでしょうし、この記事で試算した金額よりも高い金額で開発をされているFBAさんもいらっしゃると思います。
実際に試算したとおり、いくらFileMakerでもやはりアウトソーシングによる開発を前提とするとなると、そのほとんどは受託開発費用が締めることになります。
このコストを抑える方法は、たったひとつで内製化率を上げて外注比率を下げることです。
ここで言う内製化とは、なにも社内でコードを書くということではありません。
ソフトウェア開発の目的は明確にして、それをRFPの形で明文化するだけでもコスト削減効果は非常に大きいです。それに加えて、業務フローのAs/IS・ToBeや、現在の業務で使用している帳票・システム画面のスクリーンショットの取りまとめ、そして何よりも「予算」を提示いただけるだけで、アウトソーシングコストはかなり落とすことができます。
もちろん、自社で実装フェーズまで対応できるようになれば、さらにアウトソーシングコストを削減刷ることができます。実際、弊社のお客様は概ね1〜2年で、FileMakerプラットフォームを用いた内製化が軌道に乗り、大幅なアウトソーシング費用の削減に成功されています。
最初はどうしてもまとまった費用が必要となってきますが、内製化比率を上げることで、中長期的に大きなコスト削減効果が期待できるのがソフトウェア開発の内製化です。
*
FLTライセンス価格表
*
NTTパブリッククラウドサービス・クラウド・エヌ
*
この記事を読まれた方には、こちらの記事もおすすめです。