内製化

FileMakerと超高速開発ツールのコスト比較

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こんにちは。
ライジングサン・システムコンサルティングの岩佐です。

このブログ記事では、ソフトウェア開発の内製化をご検討されている企業のご担当者を対象に、一般的に「超高速開発ツール」と呼ばれる開発プラットフォームと、FileMakerプラットフォームの導入・運用コスト面にフォーカスしてお伝えしたいと思います。

今回この記事でご提示する幾つかの金額は、あくまでもネット検索のみで入手可能な数字であることにご注意ください。正確な情報を取得するには、やはり個別の事情があるので、それぞれの販社さんにお問い合わせをお願い致します。

また、この記事を書いている私自身がFileMakerプラットフォームでの内製化支援を生業としているので、読む方によってはかなり偏った記事に感じられるかもしれません。もしかしたら、本記事を読むことで気分を害する方もいらっしゃるかもしれませんが、決して他意はございません。

付け加えて、今回比較するツールは、恐らく対象とするターゲット顧客も、ライセンスに対する考え方も異なるため、単純比較は極めて困難です。ですのでかなり「表面的」な比較になっています。あくまでも、私が「もし社内の内製化推進担当者だったら…」という視点で書いておりますので、もし内容に誤りがございましたら、ご指摘をいただきたくお願い致します。

1.超高速開発ツールとは?

超高速開発ツール。エンタープライズのソフトウェア開発に何らかの形で携わっている方だと一度は聞いたことのあるキーワードではないでしょうか。

この分野の情報をネットで調べてみると、「Wagby」「GeneXus」「web performer」「楽々Framework3」といった具体的なプロダクト名が目につきます。

情報をお伝えするにあたって、これらを一様に束ねる「超高速開発ツール」の具体的な定義があるのかを調べてみたのですが、「超高速開発コミュニティ」というサイトが見つかりました。

こちらのサイトのFAQには、超高速開発ツールを次のように定義しています。

Q1. 超高速開発ツールの定義は?
A1. 従来型のスクラッチ開発に比較し、少なくとも3倍から10倍という生産性を提供できる、具体的なツールとします。

ネットで調べられる限りですが、これが今のところ見つけることのできた唯一の定義です。

以下、超高速開発ツールとして著名な4つのプロダクトについて、各販売会社、開発会社のサイトからコピーを引用させていただく形でご紹介します。

1-1.Wagbyとは?

株式会社ジャスミンソフト様のWagbyのサイトより引用させて頂きました。

Wagby (ワグビィ) は Web ベースのエンタープライズアプリケーションをノンプログラミングで超高速に開発するツールです。設計情報から業務ルール、画面、データベーススキーマなど、すべてを自動生成します。
詳細設計から単体テストまでの工数を大幅に削減することに加え、実際に動作するシステムを使ってレビューすることで、要件の修正もすぐに反映できるようになります。

1-2.GeneXusとは?

自社サイトでGeneXus開発実績No.1と公言されている株式会社ウイング様のGeneXus説明サイトよりコピーを引用させて頂きました。

GeneXus(ジェネクサス)とは南米ウルグアイのGeneXus S.A.社が開発したアプリケーション自動生成ツールです。
データ項目や画面、業務ルールといった設計情報を入力すると、JavaやC♯、Rubyのソースコードを自動的に生成し、これと同時に各種データベースソフトに対応したテーブル定義情報も自動的に作成します。
自動生成による開発のためヒューマンエラーが起きにくく、さらに習得のみで開発言語やDBMSなどの各環境に対応したシステムづくりができるため、他ツールに比較してもライフサイクルを考慮した非常に価値の高いシステム構築が可能です。

1-3.Web Performerとは?

キヤノンITソリューションズ株式会社様のサイトより引用させていただきました。

超高速開発ツール Web Performer はノンプログラミングでWeb アプリケーションを100%自動生成するマルチブラウザ対応の超高速開発ツールです。
直感的な開発、素早いリリース、自動生成による品質の均一化などにより開発期間が短縮でき、業務のエキスパートであるユーザ部門とシステム開発のエキスパートであるIT 部門が参画する「共創型開発」を実現し、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応したシステム構築が可能となります。

1-4.楽々Framework3とは?

住友電工情報システム様のサイトより引用させて頂きました。

楽々Framework3は、部品組み立て型の純国産Webアプリケーション開発ツールです。
業務にそのまま使用することができる部品を多数持ちそれらを組み合わせることによりWebアプリを超高速に開発でき、保守性の高いWebアプリケーションシステムを実現/運用することができます。
チームの情報共有ツールから基幹系システムまで幅広く対応でき、15年以上の実績と4,000を超える業務システム・Webアプリケーションシステムの構築・稼働実績を誇ります。

1-4.全てのプロダクトに共通するのはコードジェネレーター

ご紹介した4つのプロダクトに共通するのは、どのツールも「コードジェネレーターである」という部分です。

プロダクトによって、生成したコードを編集できる・できない、もしくはRDBMSのスキーマ出力機能がある・ないの差はあるものの、どのツールもJavaを始めとする一般的なプログラミング言語のコードを自動生成するツールだということです。

ですので、FileMakerプラットフォームと違って、別途バックエンドで動くRDBMSを用意する必要があります。

2.代表的な超高速開発ツールプロダクトの価格

こちらもネットで調査できる範囲ですが、簡単にプロダクト毎の価格情報をまとめてみました。

2-1.Wagby

WagbyにはProject/Unlimited/Corporateという3つのライセンス体系があるようです。評価も兼ねてミニマムスタートを考慮した場合、恐らくProjectのプランを選択するものと思われます。

この場合、まず開発ライセンスとして、開発者1名あたり45,600 円/1年のライセンス費用が必要と思われます。

次に開発したソフトウェアを実行するランタイムライセンスが必要になるようです。ラインタイムライセンスは、初年度と次年度以降で費用が異るようです。

初年度は、1プロジェクト10ユーザ接続で96万円。次年度以降は同じく1プロジェクト10ユーザ接続で19万円と提示されています。

また、10ユーザ以上の接続が必要な場合、10セッションユーザ単位10万円で追加のCALが購入できるようです。

さらに、負荷テスト用・検証用ラインセンスというものが存在します。こちらは「本番環境と同じ環境をもう一つ用意しておき、負荷テストや検証用に用いる場合は標準価格の半額でご提供します。」と説明されているので、本格的な開発をするとなると必ず必要となってくるでしょう。

また、ライセンスは1アプリケーション単位となっています。

1アプリケーションをどのように定義するのかは解りかねるのですが、恐らくこれはビルドするプロジェクト単位で区切られているのではないかと思います。

上記の条件を元に、100名が常時利用するシステムを社内の開発者3名で内製する場合のコスト試算は次のとおりです。また、開発は継続して次年度以降も3名の開発者が携わりながらソフトウェアの機能追加・修正を継続的に実施することを想定します。

<初年度>
・開発者ライセンス:10万円 x 3名 = 30万円
・ランタイムライセンス:1プロジェクト10ユーザ接続・96万円 + 追加セッションライセンス10万円 x 9 = 90万円 = 216万円
・検証環境:1プロジェクト10ユーザ接続・96万円の半額 = 48万円
・合計:294万円

<次年度>
・開発者ライセンス:10万円 x 3名 = 30万円
・ランタイムライセンス:1プロジェクト10ユーザ接続・19万円 + 追加セッションライセンス2.5万円 x 9 = 90万円 = 22.5万円
・検証環境:1プロジェクト10ユーザ接続・19万円の半額 = 9.5万円
・合計:62万円

上記は1アプリケーション(1プロジェクト)単位に必要となってくる費用なので、もしプロジェクトが2つ、3つと増えていくと、それだけ追加の費用が発生することになるはずです。

そしてWagbyはコードジェネレーターです。データベースエンジンは搭載していないので、Wagbyの費用意外に、RDBMSのライセンス費用やサーバライセンスの費用が発生します。Wagbyのサイトでは、「Oracle, SQL Server, DB2, MySQL, PostgreSQL といったさまざまなデータベースに対応。」と説明されています。

例えばバックエンドのRDBMSにSQLServerを採用した場合のライセンス費用を試算すると、概ね350万円の費用が別途必要と思われます。(※最新のSQLSerer2016の情報が見つからなかったので、ひとつ前の2012バージョンの価格情報から試算:https://www.microsoft.com/ja-jp/server-cloud/local/sqlserver/2012/howtobuy/default.aspx)

・サーバライセンス:15.3万円
・クライアントアクセスライセンス: 3.33万円 x 100 = 333万円
・合計:348.3万円

さらに、ツール習得にかかる技術者の教育コストや製品導入後のサポートコストも無視できません。Wagbyの開発元であるジャスミンソフト様では、オフィシャルのトレーニングメニューは用意されておらず、各販売会社さんに「お問い合わせください。」とのことです。

さらに付け加えると、Wagbyというツールの習得以外にも、バックエンドとなるRDBMS製品の習得コストが必要になりますし、ツールが生成したコードに手を加えるとなると、Java/JavaScriptのスキル獲得コストも必要です。(注:様々なブログ記事等から推測すると、そもそもプログラミングの基本的なスキルを持った技術者が使うことを想定されているようです。)

付け加えて、高性能な商用RDBMSを運用するとなると、そのRDBMSプロダクトに精通したDBAによる定期的なメンテナンス(保守)が必要となるはずです。例えば適切なバックアップ・リストア計画の策定と実施や、定期的なチューニング作業に伴うパフォーマンスの回復などは、システムがミッション・クリティカルであればあるほど重要なタスクとなってきます。

これらのスキル獲得コストを、ざっくりと1名あたり50〜80万円と試算すると、イニシャルの教育コストは150〜240万円となります。

2-2.GeneXus

GeneXusについては、まずGeneXus公式サイトに価格情報が見つかりませんでした。

ネット検索でヒットする2次情報から推測する限り、1開発者ライセンスが250〜350万円ということはなんとなく想定できるものの、それが買取ライセンスなのか年度ごとに更新するタイプなのかはわかりません。

恐らく、GeneXusから日本の販社にライセンスが一定の仕切り価格で卸され、あとはその販社さんごとに自社も利益を乗せて販売しているものと思われます。

ですので、本記事ではGeneXusの価格情報はお伝えしない(できない)ことにします。

2-3.Web Performer

Web Performerについても、一定の導入シナリオにもとづいて試算可能な価格情報が見つかりませんでした。

こちらのプレスリリースサイトに、簡単な情報はあるのですが、これだけだとあまりに抽象的で具体的な試算のしようがありません。https://www.canon-its.co.jp/news/detail/20170605webperformer.html

恐らく事業会社内における内製を意識したライセンスが「Web Performerユーザライセンス」。そしてアウトソーシングで開発を受託する開発企業向けのライセンスが「Web Performer SI開発ライセンス」ということだと思います。

価格はそれぞれ、前者が360万円から、後者が150万円からとなっており、さらに前者には最小構成3ライセンスから、そして後者には最小構成2ライセンスからという条件がついています。

この情報からでもいくらか想像はできますが、やはり「個別のお問い合わせ」が必須のようです。ですので、本記事ではWeb Performerの価格情報はお伝えしない(できない)ことにします。

2-4.楽々Framework3

楽々Framework3についても、一定の導入シナリオにもとづいて試算可能な価格情報が見つかりませんでした。こちらのライセンス体系が説明されたサイトにも「実際の価格は 問い合わせフォーム にてお問い合わせください。」とあります。

ですので、本記事では楽々Framework3の価格情報はお伝えしない(できない)ことにします。

3.FileMkerプラットフォームのライセンス費用

100名が常時利用するシステムを社内の開発者3名で内製する場合のコスト試算は次のとおりです。

また、Wagbyの節で試算した時と同じく、開発は継続して次年度以降も3名の開発者が携わりながらソフトウェアの機能追加・修正を継続的に実施することを想定します。

【初年度】
・FLT100ユーザ接続:99.3万円
・FileMakerProAdvanced : 2万円 x 3名 = 6万円(AVLA価格/千円以下切り捨て)
・FileMakerDeveloperSubscription:1万円
・合計:106.4万円

【次年度以降】
・FLT100ユーザ接続:99.3万円
・FileMakerProAdvanced : 2万円 x 3名 = 6万円(AVLA価格/千円以下切り捨て)
・FileMakerDeveloperSubscription:1万円
・合計:106.4万円

上記はFLTでの試算ですが、条件が合えばASLAというライセンスでもOKのです。ASLAで試算すると、年間のライセンス費用は約83万円と更に安くなります

さらにFileMakerプラットフォームには、最近FileMaker Cloud というサービスも加わりました。このサービスをチョイスすれば、社内でサーバを買う費用も必要ないですし、WindowsServerOSに関する費用も必要なくなります。

付け加えて、FileMakerプラットフォームは、コードジェネレーターではなく独自のデータベースエンジンを搭載しているので、バックエンドのRDBMSを別に用意する必要はありません

内製化のコスト試算をする場合には、これに技術者一人あたりのスキル獲得コストを加える必要があります。

これは様々な開発プラットフォームを経験してきた私の個人的な見解ですが、FileMakerプラットフォームは、他の開発プラットフォームと比較すると、スキル獲得コストが極めて低いのが特徴です。

これは、もちろんFileMakerプラットフォームが開発者フレンドリーなプラットフォームであることはもちろんのこと、それ以上に体系化されたトレーニングプログラムが安価に提供されていることが非常に大きいです。

FileMakerプラットフォームの公式トレーニングであるFileMaker Master Training の価格は次のように公開されています。

  • 初級編:27,000円(2日間、税込)
  • 中級編:81,000円(3日間、税込)
  • 上級編:54,000円(2日間、税込)
  • 合計 :162,000円

さらにまとめて申し込むとパック割引が適用されて¥ 135,000 (税込) になります。

ここでは独断と偏見のようになってしまいますが、これに弊社のような内製化を支援する企業のコンサルティングサービスを含めて、一人あたりのスキル獲得コストを30万円と仮定しましょう。

そうすると、30万円✕3名で90万円となります。

4.まとめ

本記事では、超高速開発ツールの代表的なプロダクトと、FileMakerプラットフォームを価格という側面から比較してお伝えしてきました。

残念ながら、Wagby以外のプロダクトに関しては全て「お問い合わせ」が必要なため、比較をすることができませんでした。

個人的には、せっかくの「超高速開発ツール」なのですから、価格の把握も「超高速」に把握できるようにしてほしいという感想を持ちました。

超高速開発ツールを検討されている企業は、スピード感を持って意思決定をしたいという潜在的な欲求を持っているはずです。その潜在的要求に応えること無く、顧客のお財布の中身を探りながら価格を提示するという旧来の方法は極めて全近代的な企業文化を感じさせられます。

もちろん様々な理由があってのことだと思いますが、「クライアント・ファースト」を考えると、必要な情報がすぐに入手可能な状態にしておくという企業の姿勢は極めて重要だと思います。

その点、Wagbyについては非常に好印象を持ちました。ツールや価格体系についてももちろんなのですが、それ以上に「企業としての姿勢」に好感がもてると思いました。やはりWebサイトは顧客が知りたいことを伝えるという「顧客視点」にどれだけ立てているかで、その企業の文化が垣間見えるものですね。

Wagbyは無料セミナーなどもかなり頻繁に開催されているようなので、近日中に参加してみたいと思います。

最後に、本記事では、FileMakerプラットフォームと比較しての「高い」「安い」の評価には言及しないものとします。

ともうしますのも、「高い」「安い」の評価は、多分に主観的な要素が入ってくることと、それを評価する人のバックエンドスキルや、過去から積上げてきたアセット、及び企業の事業規模や文化によって大きく異なるからです。

ただ私は改めて、今回この記事を書くにあたって調査した結果も踏まえて、ソフトウェア内製化の開発基盤としてFileMakerプラットフォームは自信を持ってクライアントにお薦めできると確信しました。

FileMakerプラットフォーム、そしてWagbyにおいてはライセンス価格が「明朗」に公開されています。さらにFileMakerプラットフォームに関しては公式トレーニングの価格までも公開されているので、スキル獲得コストの試算も非常にし易いです。

一方、残念ながらそれ以外のプロダクト、そしてバックエンドのRDBMSはこの価格明朗性に疑問が残ります。

このあたりも自信をもってFileMakerプラットフォームを推奨する一因であることを付け加えておきたいと思います。

本記事でご紹介させていただいたWagbyのオフィシャルサイトです。

FileMakerプラットフォームのFLT、及びASLAの価格情報サイトです。

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